BANJIR LUMPUR PANAS(熱い泥の洪水)天災、人災?

インドネシアは石油、天然ガスを初め、石炭、ボーキサイトなど様々な天然鉱物資源に恵まれ、さらに世界有数の熱帯雨林の森には、豊富な木材資源、そして2億人以上の人口を有する東南アジアの大国として、その経済発展潜在能力は高いと言われ続けてきたが、経済発展の現状は他の近隣諸国に大分遅れをとっているように思われる。

近年はアチェの大津波、去った5月のジョグジャの地震そして同じく中部ジャワのメラピ山の噴火等の数々の自然災害に見舞われている。これらの自然災害は火山地帯のインドネシアの宿命とも思われ、その後の援助対策等の整備が非常に重要な課題だと思えるが、これらの災害復興に対する、政府の援助予算の執行、外国からの援助金が被災者に届かない等、色々問題が生じているの良く知られている事である。

去った6月7日に東ジャワ州のパスルワン県の協力工場へ行く途中の高速道路の上の陸橋に多くの人だかりがあった。話を聞くと石油かガスが噴出している模様との話だ。思えば数ヶ月前より高速道路のすぐ横に櫓が立ち何かの掘削が始まったのは見かけていた。さすがインドネシア資源大国、こんな所でも石油、ガスが出るのか思いながら現場を通過した。

それから約1週間後再び工場に向かうため先日の現場近くに来ると高速が閉鎖され入れない。話を聞くと現状は全く治まって無く、毎日約5千立方以上の泥が噴出し続け、2つの村を覆い、そして近隣の水田100へークタール以上を埋め、高速道路を乗り越えて被害は拡大しているらしいとの噂であった。このような現状が明らかになるまでマスコミでの被害の報道は殆ど無かった。
東ジャワの工場地帯のパスラワン県そして高原都市のマランへの大動脈が切断され迂回路を求めた自動車で近辺の村々で大渋滞を引き起こす段階になりマスコミでも報道される様になった。しかし安全対策、責任の所在を追及する報道は殆ど聞かれない。事態を引き起こした掘削会社は土着民族系の最大の財閥系の1つで、現在の政府の有力な閣僚の一人を出している。

これだけの被害を出しながら警察、政府から責任追及の声が上がらないのは何故かと非常に不思議ではあるがインドネシア人に聞くと“ここはインドネシアだから”との返事が返ってきた。全く釈然としない答えだがインドネシアでの我々の日々の仕事、生活体験からすると妙に納得したくなる。これもインドネシアでは有りである。

現在も泥の噴出が収まる気配がない。(最新の情報によると、2006年7月4日現在126ヘクタールが熱い泥に覆われ、その中には17の学校と15の工場がある。)そして有効な対策の方法も打ち出せず、被害地域は拡大し続けているが安全対策、責任追及、被害の補償等に対する話はまだ殆ど聞えない。

掘削用クレーン

高速道路に迫る泥

泥の噴出現場